妊娠中の健康管理は、安全な出産や産後の赤ちゃんのためにもとても大切です。近年「妊娠糖尿病」が増えているのはご存じですか?
初めて聞く方も、すでに指摘を受けた方も、このページで妊娠糖尿病に関する正しい知識を身につけましょう。
目次
- ○ 妊娠糖尿病とはどんな病気?
- ○ 妊娠糖尿病になる原因は?
- ○ 妊娠糖尿病になりやすい人
- ○ 妊娠糖尿病になるとママ・赤ちゃんへの影響は?
- ・ママへの影響
- ・赤ちゃんへの影響
- ○ 妊娠糖尿病と診断されたら?
- ○ 妊娠糖尿病の治療法
- ・食事療法
- ・運動療法
- ・薬物療法
- ○ 妊娠糖尿病にならないために
- ○ まとめ
妊娠糖尿病とはどんな病気?
妊娠糖尿病とは、妊娠中に発症した高血糖状態の「糖代謝異常」のことを指します。妊娠前は正常な血糖値だった女性でも、妊娠によるホルモンの変化や身体の変化によって、血糖値が上昇しやすくなります。この状態を放置すると、ママ自身の健康や赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすリスクがあります。
通常、妊娠24〜28週ごろに「ブドウ糖負荷試験(OGTT)」という検査で診断されます。妊娠糖尿病は7~9%程度のママが診断されますが、出産後には多くの場合で血糖値は正常に戻ります。
ただ、一部の人は将来的に2型糖尿病に進行する可能性もあるため、出産後のフォローアップも重要です。
妊娠糖尿病になる原因は?
妊娠糖尿病の主な原因は、妊娠によって分泌される「インスリン拮抗ホルモン」の増加です。胎盤から分泌されるホルモン(ヒト胎盤ラクトーゲン、エストロゲン、プロゲステロンなど)は、血糖を下げる働きのあるインスリンの効き目を弱めます。これにより、インスリンの働きが足りなくなり、血糖値が高くなります。
また、妊娠中は胎児に必要な栄養を優先的に送るため、母体の血糖コントロールが難しくなります。特にインスリンの分泌量が不十分な人や、もともとインスリン抵抗性がある人は、妊娠糖尿病になりやすい傾向があります。
妊娠糖尿病になりやすい人
以下のような特徴を持つ人は、妊娠糖尿病のリスクが高いとされています。
・年齢が35歳以上の初産婦
・BMIが25以上の肥満体型
・家族に糖尿病の人がいる
・過去に妊娠糖尿病と診断されたことがある
・巨大児(4,000g以上)の出産経験がある
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の既往歴
・日常的に運動習慣がない
これらのリスク要因を持っている人は、妊娠初期から血糖値の管理を意識することが大切です。医師の指導のもと、定期的な検査を受け、早期発見に努めましょう。
妊娠糖尿病になるとママ・赤ちゃんへの影響は?
妊娠糖尿病は無症状のことが多いため軽視されがちですが、放置すると深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ママへの影響
妊娠高血圧症候群のリスク増加や、羊水過多や早産になるリスクが上昇します。
それに伴い、難産や帝王切開の可能性が高くなることもあります。
また、分娩後に2型糖尿病へ進行する場合もあり、出産後も長期的な健康リスク(心疾患や高血圧)を抱える可能性があるため、妊娠時だけでなく産後の生活習慣改善も重要です。
赤ちゃんへの影響
出生時の体重が4,000g以上の巨大児となり難産につながる可能性があります。また、お腹の中でママからの血糖が多い状態で過ごした赤ちゃんは、出生後にママからの血糖の供給がなくなると低血糖になることがあります。
将来的な肥満や2型糖尿病の発症リスクも伴うため、ママの身体はもちろん赤ちゃんの将来のためにも血糖値のコントロールを行い、これらのリスクは大幅に減らしましょう。
妊娠糖尿病と診断されたら?
日本産科婦人科学会では、妊娠糖尿病の可能性のある人の見逃しを防ぐため、妊娠初期~中期のすべての妊婦さんを対象に、採血で血糖値を測定するスクリーニング検査を推奨しています。
妊娠糖尿病と診断された場合は、まず医師の指導のもとで血糖コントロールの生活が始まります。最初に行うのは、以下のような対策です。
血糖値の自己測定(1日4〜7回)
管理栄養士による食事指導
適度な運動の導入
インスリン治療の必要性の判断
治療によって血糖値を正常に保つことができれば、健康な出産が可能です。
妊娠糖尿病の治療法
妊娠糖尿病の治療は、「血糖値の安定」と「母子の健康維持」が目的です。治療には食事・運動・薬物の3種類の治療法がありますので、詳しい治療法を紹介していきます。
食事療法
食事は妊娠糖尿病治療の基本です。カロリーを抑えるだけでなく、栄養バランスや血糖の上がりにくい食品選びが重要です。
具体的には、主食・副菜・主菜をバランスよいメニューで間食は控えめにし、3食しっかり食べるようにしましょう。
食物繊維を多く含む野菜や海藻類を積極的にメニューに取り入れることも大切です。
妊娠糖尿病と診断された後は、医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事内容を見つけましょう。
運動療法
運動は血糖値を下げる効果があるだけでなく、インスリン感受性を高める働きもあります。ただし、妊娠中は安全第一なので、必ず医師の指示に従いましょう。
1日30分程度のウォーキングがおすすめですが、お腹が張っていたり、体調が良くない場合は無理は厳禁です。
食後1時間~2時間以内に有酸素運動が効果的ですが、日常生活に無理なく取り入れられる運動を選ぶことが継続のカギです。
薬物療法
食事と運動だけでは血糖値がコントロールできない場合、インスリン注射が用いられます。インスリンは胎児に影響を与えにくく、妊娠中でも安全とされています。
インスリン量は体重や胎児の発育に合わせて調整しているため、医師の管理のもと、安心して治療を進めましょう。
妊娠糖尿病にならないために
妊娠糖尿病は遺伝や体質によって発症しやすい場合もあるため、完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。
栄養が偏らないように、バランスの良い食事を心がけ、血糖値の急上昇を抑えるために、野菜やきのこなど食物繊維の多い食べ物から食べるなど、些細なことでも出来ることから気を付けていきましょう。
また、妊娠初期から適度な運動を習慣的に行うことも大切です。
妊娠している間は体重変化なども大きいため、妊娠初期から健康診断や血糖値チェックを行い、何かあればすぐに相談するようにしましょう。
まとめ
妊娠糖尿病は、適切な対応をすることで母子ともに健康に出産することが可能です。重要なことは「早期発見」と「正しい治療」を行う事。
妊娠前から家族に糖尿病の方がいるなど、妊娠糖尿病になる可能性がある場合は、妊娠前からはやめに生活習慣の見直しを行いましょう。
不安な点がある場合は、遠慮せず産婦人科医に相談してください。あなたと赤ちゃんの健康のために、できることから一歩ずつ始めましょう。