妊娠中の食生活は、ママと赤ちゃんの健康と成長を守るうえでとても大切です。本記事ではカフェインが胎児に与える影響や、母体へのリスクを解説します。
カフェインは妊娠中に摂取してはいけない訳ではありませんので、正しく理解し、ご自身のカフェイン摂取量を意識的に管理するようにしましょう。
目次
- ○ 妊婦がカフェインを控えるべき理由
- ○ カフェインが胎児に与える影響
- ・流産
- ・胎児発育不全
- ・低出生体重児
- ○ カフェインの過剰摂取で母体に与える影響
- ・妊娠の時期で異なるリスク
- ・授乳中のカフェインは?
- ○ 妊娠中に摂取して大丈夫なカフェインの摂取量は?
- ○ カフェインはどんな食品・飲み物に含まれる?
- ○ 妊娠中に飲んでも良い飲み物は?
- ○ もしカフェインを摂取してしまったら…
- ○ まとめ
妊婦がカフェインを控えるべき理由
妊娠がわかったら、アルコールや喫煙と同様に注意したいのがカフェインの摂取です。ママが摂り入れたカフェインが、へその緒を通じてお腹の赤ちゃんに届いてしまいます。赤ちゃんは、肝臓の機能が未熟で、カフェインを分解して体の外へ排出する能力が十分にありません。そのため、ママがカフェインを摂りすぎると、赤ちゃんはカフェインを排出出来ずに長く影響を受け続けることになります。この状態が続くと、赤ちゃんの成長や発達に悪影響を及ぼす可能性が高まってしまうため、カフェインを控えることが望ましいとされています。
カフェインが胎児に与える影響
ママが摂ったカフェインの影響を受け続けた赤ちゃんには、いくつかのリスクが懸念されます。特に、成長や発育に影響を及ぼす可能性があるため、少量のカフェインなら問題ありませんが、たくさん摂りすぎないにしましょう。
流産
妊娠初期は、赤ちゃんの最も重要な器官が形成されるデリケートな時期です。この時期のカフェイン過剰摂取は、流産のリスクを高める可能性があります。カフェインには血管を収縮させる作用があり、これにより子宮や胎盤への血流が一時的に減少することで、胎児への栄養や酸素の供給が滞る可能性も考えられます。特に妊娠12週までの初期段階では、赤ちゃんの成長基盤が作られるため、カフェインの摂取量にはより一層の注意が必要です。
胎児発育不全
先ほどの流産と同様に、カフェインが胎盤の血管を収縮させ、胎盤への血流を減少させることで、赤ちゃんが十分な栄養や酸素を受け取れなくなる可能性が考えられます。これにより、赤ちゃんが本来の成長曲線に沿って成長できず、お腹の中での発育が遅れる「胎児発育不全」のリスクが高まる恐れがあります。お腹の赤ちゃんが順調に育つためには、適切な栄養と酸素の供給が不可欠なため、カフェインの摂取量を意識的に管理することが大切になります。
低出生体重児
低出生体重児とは、生まれてきたときの体重が2,500g未満の赤ちゃんを指します。妊娠中のカフェイン摂取量が多いほど、低出生体重児で生まれるリスクが高まる可能性が示されています。胎児発育不全と同様に、カフェインによる胎盤血流の減少などが影響していると考えられます。低出生体重で生まれた赤ちゃんは、免疫力が弱く病気にかかりやすかったり、将来的に生活習慣病や発達上の問題を引き起こすリスクが高まることが知られています。
カフェインの過剰摂取で母体に与える影響
妊娠中は、お腹の赤ちゃんだけでなく、ママ自身の体も大きく変化しています。カフェインは、妊婦さんの体に様々な影響を与える可能性があり、その影響は妊娠の時期によって異なることがあります。
妊娠の時期で異なるリスク
妊娠初期は、つわりによる吐き気やだるさで体調が優れないことが多い時期です。カフェインには胃酸の分泌を促進する作用があるため、つわりがひどい時に摂取すると、吐き気や胃の不快感を悪化させる可能性があります。また、この時期はホルモンバランスの変化で精神的に不安定になりやすいため、カフェインによる興奮作用が、不眠やイライラを増強させることも考えられます。
妊娠中期に入るとつわりが落ち着き、比較的安定した時期となりますが、貧血やむくみに注意が必要になります。カフェインは鉄分の吸収を阻害する作用があるため、貧血が進行するリスクを高める可能性があります。また、利尿作用によって体内の水分バランスが崩れ、むくみを悪化させることも考えられます。
妊娠後期になると、お腹が大きくなり、体の負担が増える時期です。カフェインによる不眠や利尿作用は、ただでさえ夜間の休息が取りにくいこの時期の妊婦さんにとって、さらなる負担となる可能性があります。また、カフェインは胃腸の働きに影響を与えることがあるため、便秘になりやすい妊娠後期においては、不快感を増強させる可能性もゼロではありません。
授乳中のカフェインは?
出産後、母乳育児を選ぶママにとっては、授乳中のカフェイン摂取も注意が必要です。ママが摂取したカフェインは、母乳を通じて赤ちゃんに移行します。産まれてすぐの赤ちゃんも、胎内にいる時と同様に肝臓の機能が未熟なため、カフェインを過剰摂取すると赤ちゃんがカフェインの影響を受けてしまう可能性があります。
赤ちゃんがカフェインの影響を受けると、寝つきが悪くなる、眠りが浅くなる、興奮して泣き止まなくなるといった症状が見られることがあります。また、カフェインの利尿作用により、赤ちゃんの脱水を招く可能性も指摘されています。
妊娠中に摂取して大丈夫なカフェインの摂取量は?
「カフェインは一切ダメなの?」と不安に感じる妊婦さんもいるかもしれませんが、少量であれば問題ないとされています。
世界保健機関(WHO)や英国食品基準庁(FSA)など、多くの機関が妊婦さんのカフェイン摂取量を1日200mg以下に抑えることを推奨しています。これは、コーヒー約2杯分に相当する量です。
具体的に、一般的な飲み物に含まれるカフェイン量を参考に見てみましょう。
レギュラーコーヒー(150ml):約60~100mg
紅茶(150ml):約30~50mg
緑茶(150ml):約30mg
ウーロン茶(150ml):約30mg
ココア(150ml):約10~20mg
エナジードリンク(1本):約80~150mg(製品による)
これらはあくまで目安であり、豆の種類や淹れ方、製品によってカフェイン量は大きく異なります。ご自身の体質や体調、そして赤ちゃんの様子を見ながら、無理のない範囲で調整することが大切です。カフェインに敏感だと感じる方は、より控えめにすることをおすすめします。
また、授乳中のママが摂取しても安全とされるカフェイン量も、妊娠中と同様に1日200mg以下が目安とされています。
しかし、赤ちゃんのカフェインに対する感受性は個体差が大きいため、ママが少量のカフェインを摂取しただけでも、赤ちゃんに影響が出ることもあります。
カフェインを摂取後の母乳で、夜泣きが増えたり、興奮気味になったりするようであれば、カフェインの摂取量をさらに減らすか、一時的に中止することも検討しましょう。不安な場合は、小児科医や助産師に相談しましょう。
カフェインはどんな食品・飲み物に含まれる?
カフェインが含まれるのは、コーヒーや紅茶だけではありません。意外な食品や飲み物にもカフェインは含まれており、知らず知らずのうちに摂取しすぎてしまうケースもあるので注意が必要です。
例えば、コーラなどの清涼飲料水、チョコレートやココアにも少量ですがカフェインが含まれています。風邪薬の中にもカフェインが含まれているものがあるので、市販薬を購入する際は成分表示をしっかり確認しましょう。
以下は、見落としがちなカフェイン含有食品・飲料の例です。
抹茶(粉末):カフェイン含有量が高め
一部の煎茶やほうじ茶:緑茶と同様にカフェインを含む
市販の栄養ドリンク:製品によっては高カフェイン
チョコレート菓子:カカオ含有量が高いほどカフェインも多い傾向
これらの食品や飲み物を習慣的に摂取している場合は、1日のカフェイン摂取量が推奨量を超えてしまう可能性があるので注意が必要です。製品の成分表示をよく確認し、意識的にカフェイン摂取量を管理するように心がけましょう。
妊娠中に飲んでも良い飲み物は?
妊娠前にコーヒーなどをよく飲まれているママにとっては「カフェインを控えるのはつらい…」と感じますよね。今は美味しいノンカフェインやカフェインレスの飲み物もたくさんありますのでご紹介します。
カフェインレス(デカフェ)コーヒー・紅茶は、通常のコーヒーや紅茶からカフェインを90%以上除去したものです。味や香りは通常の製品とほとんど変わらないため、いつもの味が恋しい方におすすめです。最近では、スーパーやコンビニでも手軽に手に入るようになりました。選ぶ際は、「カフェインレス」や「デカフェ」の表示をしっかり確認しましょう。
完全にカフェインを含まないノンカフェイン飲料も豊富です。
麦茶: 日本人に馴染み深く、ミネラルも豊富。香ばしくて飲みやすいのが特徴です。
ルイボスティー: ノンカフェインでミネラルが豊富。ポリフェノールも含まれており、美容や健康にも良いとされています。
ハーブティー: カモミールやペパーミント、ローズヒップなど、リラックス効果のあるものも多く、気分転換にもぴったりです。(妊娠中に避けるべきハーブもあるので、事前に確認を!)
水・炭酸水: 最もシンプルで安全な選択肢。フレーバー付きの炭酸水もおすすめです。
これらの飲み物を上手に活用して、無理なくカフェイン摂取量をコントロールしましょう。
もしカフェインを摂取してしまったら…
「うっかりカフェインを摂りすぎてしまった!」と後悔したり、不安になったりすることもあるでしょう。少量であれば、過度に心配する必要はありません。大切なのは、すぐに気づいて今後の摂取量を調整することです。
もし大量に摂取してしまったり、摂取後に動悸やめまい、不眠などの体調変化があった場合は、念のためかかりつけの産婦人科医や助産師に相談しましょう。
一時的なカフェイン摂取が赤ちゃんに大きな影響を与える可能性は低いですが、継続的な過剰摂取はリスクを高める可能性があります。そのため、「もし摂取してしまった」時よりも、「今後どのようにカフェインと向き合っていくか」が重要です。今回のことをきっかけに、改めてカフェイン摂取量を見直す良い機会と捉え、日々の食生活に意識的に取り組んでみてください。焦らず、ご自身のペースで安全なマタニティライフを送りましょう。
まとめ
妊婦さんがカフェインと上手に付き合うことは、母子ともに健やかな生活を送る上で非常に大切です。重要なのは、「知ること」と「適量を守ること」です。カフェインが胎児に与える影響や、母体へのリスクを正しく理解し、ご自身のカフェイン摂取量を意識的に管理しましょう。
完全にカフェインを断つ必要はありませんが、1日200mgという目安を守り、コーヒーや紅茶だけでなく、意外な食品にも含まれていることを把握しておくことが重要です。そして、どうしてもカフェインを摂りたい時には、ノンカフェインやカフェインレスの代替品を積極的に活用してみてください。最近では、美味しい選択肢が豊富にあります。
もし不安なことや疑問に思うことがあれば、一人で悩まずに、かかりつけの医師や助産師、栄養士などの専門家に相談しましょう。正しい知識を持って賢くカフェインと付き合うことで、安心して快適なマタニティライフを送ることができます。生まれてくる赤ちゃんのためにも、今日からできることから始めてみませんか。